キラキラ大島雑記帳

インディーズレーベル『キラキラレコード』代表、大島栄二の日記です

サザンとキョンキョン

 僕が今小さなインディーズレーベルなんてものを運営しているのは、平成元年にたまたまビクターレコードに入ったのがきっかけだ。当時のビクターの看板といえばサザンとキョンキョンだった。その経緯などは詳しく書かないが、僕がビクターに入社するきっかけはキョンキョンだった。キョンキョンのプロデューサーが僕を気に入ってくれて入社が決まったのである。そしてビクターを退社する時にいたのは、サザンなどを抱えるグループの宣伝部だった。数度ではあるが、サザンと同じ現場も担当した。控え室で寡黙にしている桑田さんを何度も見かけた。

 そんなサザンとキョンキョンが、今年大注目を集めている。35周年を機に復活するという。既にCDもリリースしたし、まもなくアリーナツアーが始まる。35万人を動員するという。で、僕は今NHKでやっているサザンの特集番組を見ているのだが、その番組では海という曲から始まった。1984年の、どちらかというと初期の作品だ。その後も初期の作品群をずっと歌っている。まるで生きている歴史だ。旧い歌が古くない。十分今に通用する。それとも僕の脳が思考停止してて、昔の感覚でしかこれらの曲をとらえられていないのだろうか。まあその懸念が無いわけではないが、80年代のロックバンドのCDを今聴き直した時には恐ろしく古臭いなと思うのだから、脳が思考停止しているなどと卑下する必要はないと思う。彼らの当時の音源は今聴いても全然古くない。少なくとも僕はそう思う。良いものは残るのだな。不滅なのだな。そう思う。ほんの一時期、スタジオの片隅でうろちょろさせてもらっただけではあるが、彼らと一緒に仕事をさせてもらったのは、小さなレーベルを運営する上でも財産だと思う。

 キョンキョンはというと、現在大人気のNHK朝ドラ「あまちゃん」で主人公の母親役をやっている。その母親が若かりし頃、アイドルの替え玉として歌を歌い、それが大ヒットした為に世に出るチャンスを失ったという設定だ。そのドラマの中での歌がCD化され、先週だったか、オリコンチャート2位に食い込んだ。20年ぶりの快挙だという。ドラマの人気でのことではあるが、小泉さんが女優として着実に仕事をしてきたことがそのベースになっている。それにアイドルがモチーフになっているこのドラマで、「なんてったってアイドル」なキョンキョン以外にこの役に適した人はいなかっただろう。そういう偶然が絡まり合っての、今回のヒットだ。時代は移って世代は変われども、デビュー31周年のキョンキョンがこうして歌で結果を出すというのが、なんとも嬉しい。

 20年とか、31年とか、35年とか、そういう数字が並んでいる。その期間を第一線としてファンを離すことなく活躍し続けているアーチストというのはスゴいものだ。キラキラレコードが23年というのを僕はそれなりに誇ってきているけれども、まだまだヒヨッコだ。しかも何にも結果を出していない。音楽不況だというけれど、それは多分ウソだ。売れるものは売れる、売れないものは売れない。それが真実だと思う。そうでなければ、サザンもキョンキョンも売れてるわけがないじゃないか。もちろん昔のサクセスストーリーが現在に通用するはずは無い。新しい時代に適したサクセスがあるわけで、売れていないとしたら、結果を出せていないとしたら、それは新しい時代の新しいサクセスの法則を見いだせていないか、実践出来ていないかのどちらかだ。

 そんなことを、僕は思った。サザンの新曲は「叶わない夢など追いかけるほどやぼじゃない」と歌っていて、その解釈はいろいろあるんだろうと思う。現実を見ろよ、夢見てる場合かよ。そういう意味にとらえることも出来るだろう。だが僕は、夢を見るなら叶えろよ、叶えないと野暮だぞ、と解釈した。いや、解釈したいのだ。

 どんな時代にも、どんな規模の夢にも、必ずサクセスはあるのだ。無論失敗することもある。だが、サクセスを目指して一生懸命に頑張ろう。そういうことを、僕は以前の会社の看板であったスターたちの、20年後の今日の活躍を見て心を新たにしたのだった。