キラキラ大島雑記帳

インディーズレーベル『キラキラレコード』代表、大島栄二の日記です

振り返るには早すぎる?

 まだあと4日もあるのに今年を振り返っていていいのかという疑問はあるのだけれど、残りの4日間も慌ただしいのは判っているので今のうちに振り返っておきたい。古きを温ねて新しきを知るだ。意味は微妙に違うけれど。

 まず、キラキラレコードはいくつかの点で進展したと思う。2007年くらいから取り組んできたアーチストが、紆余曲折を経て育ってきたのが何よりも大きい。しかも複数組。彼らの成長も今年はまだまだせいぜい芽が出たとか、その程度ではあるかもしれない。だから、来年の更なる成長が期待できるというものである。

 僕のレーベルとしての役割は何かというと、アーチストに目標を設定することだろうと思っている。頑張りたくても何を目指せばいいのか、どうやって取り組めばいいのかが判らずに悶々とただライブをやるだけというバンドが非常に多い。それはキラキラであれ他であれ同じである。出来ることをやる。それが彼らの日課になっている。もちろん、出来ることしかやれないのであって、出来ないことを考えていても先には進めない。だが、僕がいう彼らの「出来ること」というのは、選択肢として考えられることという意味であって、やるべきことというものではない。選択肢は実は沢山ある。それを全部やっているだけで日常の時間は確実に経過する。そしてどれも中途半端に形だけ完成し、その先に進めないでいることがものすごく多い。具体的には、例えばホームページを作ること。形だけカッコいいサイトを作ることは出来るが、じゃあそれを誰が見に来るのだということには答えもないし、策もない。例えばライブ。毎週スタジオに入って練習をして、それを披露する。いい演奏が出来てはいるのだ。でもそれを誰が見にきている? そこにはやはり答えがなく、友達たちが来て、やがて来なくなり、さびれたライブを繰り返すだけ。例えばストリート。意気込んでアンプとかの機材を揃えたものの、2~3度やって手応えを感じずにやがて止めてしまう。

 そんなことをやる前に、自分たちにとってのサクセスストーリーとは何かを考える必要があるし、そのために不可欠な活動は何だろうかという検討が必要である。だがそれを考えることは意外と難しいことらしく、それを最初から明確に持っているアーチストはほとんどいない。成功しない理由は音楽的に不足しているからではない。何をやるべきかを明確に持ち得ないから成功しないのである。だから、それを示すのがレーベルというか、僕の役割なのだろうと思っている。多くのアーチストと接して、その状況に応じていろいろとアドバイスするのだが、それをちゃんと実行できている者は意外に少ない。だから、今年のように複数組が芽を出そうとしている状況にまで来ているのがとても幸せなことだなあと思うのだ。だから、彼らが芽を出すところまでは頑張れているのだから、その先をどう進めばいいのかというアイディアを出していきたい。それが2010年の抱負ということになるように思っている。

 数年一緒にやってきたアーチストだけではない。今年は実に多くのアーチストと出会うことが出来たと思っている。それもまた素晴らしいことだ。彼らもまた様々で、玉石混淆というか、目指すところも現状もそれぞれ違っていて、まったく伸びを示してくれないケースもあるけれど、リリースを通じてキッチリ伸びてくれている場合はすごく嬉しい気持ちになる。伸びるというのはどういうことを指すのかというと、基本は売り上げだ。CDを売って勝負する以上、売り上げが大きなバロメーターになるのはいうまでもない。だが、それだけということでもないと思っている。それは例えばデモの段階で片鱗を感じさせてくれたものの完成度はイマイチで、だからレコーディングが上がるまでどうなるのかはまったくわからないというケースも少なくなく、そういうアーチストの音源がものすごくいいものに仕上がってきたときなども、僕は「成長したな」と感じるのである。もちろんそれだけで売れるということではないのだが、いい音源になるということは売れることに若干ではあるが確実に近づくのだと思う。それは、自分の作品が良ければ自信を持って勧められるし、逆に作品に不満が残るようでは売る時に後ろめたかったりするし、言い訳気味に売ることになってしまう。そういう意味で、やはりいい作品を作るということはとても大切なことであり、それを感じられれば、僕はレーベルの人として嬉しくなって来るのである。なにより、いい作品を作るためには向上心が必要である。今よりもちょっとずつ良くなっていきたい。それを実現させているというのは一緒に仕事をしていてとても嬉しいことなのである。

 もちろんどんなアーチストにも事情があるし、思うように活動できないケースもあるだろう。それはレーベルだって同じことであり、もっとこうだったらいいのにと思うことだって沢山ある。だが逆に活動していないことの理由を一生懸命探すようなことはしてはいけないし、僕もしないように心がけている。その心がけを持った中で、出来ることをきちんとやりさえすればいいと思う。年棒数億の投手が3勝では話にならないだろうが、2軍生活の選手が1軍に上がりヒットの1本も打てれば成長といえる。同じようにミュージシャンも、100万枚売れなくとも、昨日より今日が少しでも良くなるように、それを心がければいいのだと思う。

 ただし、どのくらい心がけるかも人によって異なる。一生懸命に1日8時間働いたというのが全力なのか、それとも朝は5時起き仕事終わりは夜の11時というのが全力なのか、週休2日でいいのか、元旦から仕事というのがいいのか。もっとも努力とは時間だけのことではないが、自分の基準をどこに置くのかは、なにも状況とは関係なく決めることが出来るわけで、そこの「頑張り」の基準を間違えると、100万のアーチストもやがて売れなくなり、無名のバンドは無名のままで終わってしまう。残念なことに今年リリースした新人たちの中にも、リリースしたことで満足してしまったのか、その後の活動に活発なものが見られなかったり、やるべきこととして事前に話をしていたようなことが全然出来ずに嘯いていたりする人もゼロではない。一度でも一緒に仕事をしたアーチストのことは常に気がかりだし、成長を心から願うものの、だからといってやる気のないアーチストに会社の資源を投入するのは非効率だし、もっとやる気のあって結果を出し続けているものたちにこそ集中していかないと会社としても間違ってしまう。彼らの再度の奮起を願いつつ、僕らは前に進まなければいけないのだろうと思ったりすることもしばしばだ。

 ともかくも、キラキラレコードは2010年12月14日の創立20周年を目指して、何らかの結果をたたき出していこうと心から願っている。願うだけじゃダメなのも十分判っている。頑張っていきたい。