キラキラ大島雑記帳

インディーズレーベル『キラキラレコード』代表、大島栄二の日記です

レーベルの立ち位置

 インディーズレーベルを23年半もやってきて、今思うのは自分たちの立ち位置だ。立ち位置とは、どうあるべきかということと、あるべきなのかということと、2つの意味を持っている。

 僕が社会人になったのが平成元年。ビクター音楽産業という会社になぜか滑り込んだ。バブル絶頂のその頃に、僕は就職しようという気持ちがまったくなかったのに、なぜだか会社員になることになった。それでも知らず知らずに銀行員やシステムエンジニアになった友人よりはまだマシだななんて思っていた。ビクターはいうまでもなくメジャーレーベルだ。というより、当時はまだメジャーレーベルという概念がほとんど無かった。なぜならインディーズレーベルという存在がほとんど無かったからだ。音楽を公表するにはCDを出さなければならない。それにはレコード会社に属さなければならない。そのレコード会社というのは、今でいうメジャーレーベルのことだ。僕はそんなレーベルのひとつに就職した。これは貴重な経験だったと思う。レコード会社というのは制作と宣伝で成り立っている。と思っていた。素人はそう思う。だが何より重要なのは営業だ。営業のさじ加減ひとつで店頭での展開は変わる。各社が押しものをこれでもかと売り込むので、ショップは全部入れていたらたちまち過剰在庫になってしまう。だから出来るだけ仕入れは少なくしたい。それに応じていたら自社商品は目立たなくなる。その結果、営業マンが強いエリアで売れるものが、営業マンが弱いエリアでは存在さえしないようになってしまう。また同じレコード会社の中でも、営業担当が「どれを売りたい」と考えるかで、店頭の扱いは違ってくる。そしてリスナーが店頭で目にする商品になるかどうかが、音楽が売れるかどうかのほとんどすべてだといっても過言ではない時代だった。

 ビクター生活を経て、独立してインディーズでやっていこうとする。当時はプレスにも印刷にも莫大なお金がかかった。レコーディング費用は別にしても、ちょっと仕様を豪華にすればすぐに100万超えだ。それをペイするのに3000円のCDを一体何枚売ればいいのか。3000円すべてが入る訳ではない。お店の取り分、配送費、営業管理費などなどを考えれば500枚くらい売れてくれないと話にならない。その時点でレーベルにもアーチストにも1円だって入らないのである。

 そういう状況から、どうすればアーチストにもレーベルにも利益が出るようになるのかを考え、制作のコストなども出すようにするために業者もいろいろと変えた。とにかく安くできるようにしなければ売れても赤字。それでは困るのだ。だからいろいろ変えていく。変わっていく。変わらず残るために変わっていく。23年の軌跡はその連続だったといえる。それがアーチストを戸惑わせたこともあるだろう。だが、結果的にバンドも解散して歴史上の存在になってもなお音源がCDで売られているという状況を維持出来ているということは、それなりの意義はあったのだと自負している。

 さて、音楽の世界はどんどんと変わっていって、今では配信だ。キラキラレコードでは配信に対してさほど力を入れていない。何故か。儲からないからだ。儲かるのか儲からないのかだけが基準ではないけれども、今の状態で配信に移ったとしても、裾野にいるアーチストは力を削がれるだけだ。どういうことかというと、有料にすることでダウンロード数は激減するし、単価の安い配信にシフトすることで、売れても制作費ほどの稼ぎは得にくくなるということである。150円でダウンロードされて、自分に入ってくるのが75円だとすると、1000ダウンロードされて7万5千円。万単位でダウンロードされるなら利益の可能性もあるが、1000ダウンロード程度では収益を考えることは難しい。しかもCDを売るのであればライブで直接「買ってよ」と迫ることができるが、ダウンロードだと「後でダウンロードしとくよ」で終わりだ。本当にその人が買ってくれたかなどまったくわからない。

 これはアーチストがライブ会場で売っているデモCD-Rとよく似ている。彼らはデモを3曲100円くらいで販売している。それは何を目的にやっているのだろうか。(メルマガに続く)

ーーーーーーーーーー

本日のブログ内容はメルマガで配信しているものです。この続きは無料メルマガでどうぞ。

メルマガの登録は mailmaga@kirakirarecord.com まで空メールを送ってください。可能であればお名前(ニックネームでもOK)を添えていただけるとありがたいです。