キラキラ大島雑記帳

インディーズレーベル『キラキラレコード』代表、大島栄二の日記です

政治利用

 中国の要人と天皇陛下の面会が急にセットされた件で、これまでの「30日ルール」なるものを破られたといって宮内庁長官が怒りの会見をした。それに対して各方面から「それは政治利用だ」として批判が起こった。鳩山総理は政治利用ではないと反論し、小沢幹事長は怒りの会見を開いた。

 僕が思うのは、まず、天皇陛下の健康をそれほどに重視してきたのかということである。30日ルールが重要で絶対だとすれば、逆に言えば30日前に申請されればどの国の要人の訪問も断れないということになる。とすれば、天皇陛下の健康を配慮したルールでもなんでもなく、ただの手続き論だということになる。陛下の健康を考えるのであれば、先日の式典はいったいなんだったのか。即位20年を祝うイベントで、陛下のために歌い踊るエグザイルを陛下は寒空の中二重橋に立ってご覧になった。歌は15分もの長さだったという。最後まで中継してくれるチャンネルが無かったので確認したわけではないが、中継をみていて、陛下、風邪ひくぞと思って気がかりだった。周囲の人はもっと配慮すべきじゃないかと思った。もちろん参列していた各界の著名人の中には高齢の方々もいたし、その人たちは陛下がお出ましになるずっと前から直立不動で寒空にいたし、そちらの体調もおおいに気になるところだったが、それにもまして陛下を冬の夜7時前後に外に立たせることがどういうことなのかが不可解でならなかった。それを運営したのは宮内庁のはず。少なくとも宮内庁が全体の計画に関与し、了承していたのは間違いない。そんな宮内庁の長官が、中国の要人と急遽面会をセットすることになったことを「健康面への配慮で遺憾だ」というのはすごくおかしい。というかナンセンスだ。もしも彼が、戦前の軍部が天皇の権威を利用して戦争に引きずり込んでいったことを念頭において遺憾を述べるのであれば多少の理屈もあると思う。だが、真っ先に言うのが健康配慮とはおかしすぎる。自分たちの頭を超えて何かが決まることへの官僚的な不快感の方が大きかったんではないかと、僕は感じるのである。

 その会見を受けて各マスコミが大々的に報道し論評を述べる。それに乗っかるように自民党の政治家、谷垣総裁や安倍元首相たちが「民主党が政治的に天皇陛下を利用している」と非難していた。それをみて、政治的に利用しているのは自分じゃないかと感じた。今の自民党はとにかく民主党の足を引っ張りたい、その一点で動いている。細川政権の時にもNTT株の件で首相を追求することしかしなかったし、今回も首相の献金問題を徹底的に追及しようとしている。前回はそれがうまくいったけれども、どうも今回はそういうわけにもいかなそうになってきていて、それで非難すべきポイントがあればそれを非難のネタにしたい、その気持ちがああいう発言になっているのだろうと思うのだが、それを政治的に利用していると言わずしてなんというのだ。中国に対してそんなに強いことが言えるのだとすれば、安倍元首相はなぜ在任時に靖国に参拝しなかったのか? 彼が頭角を現した拉致問題の解決に中国の協力は絶対不可欠で、だとすれば今回のことをむしろ好機ととらえて首相経験者として中国に便宜を図り、そのことで彼らの協力を引き出すような動きに行った方がいいのに、そういうことには配慮無いのだろうな。次の中国を担う人物に自ら弓を引くような姿勢を取っていることの政治的バランス感覚のなさ。それはひとえに、彼にとっては日本の将来とか拉致被害者よりも自民党の方が大切ということを意味しているのではないかと、テレビのコメントをみていてガッカリした。少しは期待したこともあっただけに。

 もちろん、民主党にも多少の反省が必要ではある。普段出てこない小沢幹事長が怒気を発して会見に出てくるのは少々やり過ぎだ。頭を垂れながら粛々とすすめばいいし、つい先日の中国でのVIP訪問の様子のあとだけに、出来るだけ目立たないように動いていくことも、大義の前には大切なことであるように思う。渡辺周副大臣がマスコミに煽られてうかつな発言をしたのは論外だ。何をやっても言っても非難されるのが政権というものなのだから、沈黙は金だということをあらためて確認すべきだろう。もちろんまったく黙っていればいいということでもないけれども。